スチームボーイ(監督 大友克洋)

hidariwakibara2004-07-19

早速見てきました。結構微妙な、手放しで大絶賛とはいかない出来だと思いました。
金と時間を大量に使って、各スタッフが頑張っていて、見ごたえのあるクオリティになっているのですが、どうもスッキリ楽しめない、心がイマイチ躍らないのです。
スッキリしない原因の一つは、この映画がいかにも万人が楽しめる単純な勧善懲悪物のような雰囲気をバンバン放出しながら、実は敵となるキャラクターが紋切り型の悪人ではない、という点にあるように感じました。実際主人公は勧善懲悪映画にピッタリはまるようなストレートな健全さを持ってる少年なのに、敵がそんなに悪人ではないので、主人公と真正面からはぶつからないのです。ここは多分大友監督がこだわりを持ってワザとそういう敵に設定してるのだと思うのですが、でもそのこだわりが単純なエンタテインメント作品としての魅力を妨げているように感じました。
あともう一点気になったのは、敵・味方が争って手に入れようとするスチームボールがイマイチ魅力不足・迫力不足な気がしました。ラピュタの飛空石のような神秘性が感じられないのです。見ててあんまり欲しくならないし、敵に渡しちゃってもいいんちゃう?って感じなのです。もっと透明でキラキラしててドバーッって奴にしてください!
わりとトーンの低い感想ですが、小西真奈美が演じていたヒロインはなかなか魅力的でした。世間知らずで我侭なお嬢様なのですが、予想外の逆境に立たされても動じずへこたれない、小気味良いキャラでした。あとグルグル回転したり重なったりするレンズがちょっと格好良かったですな。
大友監督はキャシャーンのキリキリにちょっと似たタイプの監督さんかなぁと、ちょいと感じました。ある種のビジュアルとか空間とか雰囲気とかを、実に見事に作り出すのは得意だけれど、映画全体をエンタテインメントに仕立て上げる手腕とか、エンタテインメントに仕上げるためには見所のシーンを下品にあざとく直球でぶち込むシタタカさとかは、宮崎駿とかに適わないのね。
そんな感じで、いまひとつインパクトの無い印象でしたが、もう一回見るともうちょっと魅力が見つけられそうな気もするような気もしなく無く無くない?DVDが出たらまた見ようっと。