レディ・ジョーカー

原作は高村薫の小説。大手ビール会社の社長誘拐事件に端を発する企業テロを軸に、犯行グループの心情、企業トップの思惑と混乱、警察側の執念と組織内軋轢と、三者三様の人間模様がみごとに描かれた社会派ミステリ小説の傑作。そんな傑作小説を、まさかの映像化。
原作の面白味はとにかく人間模様に尽きるのです。一言では表せないそれぞれのキャラクターの思考を丁寧に丁寧に紡いでいって、いつしか読者は犯人・企業・警察の三者それぞれの苦しみを知り、三者ともに頑張れ!と応援したくなるような、たっぷり過ぎる人物の描写が面白いのです。それを2時間の映画に詰め込むのは無茶苦茶困難な仕事なのではと、原作を読んだ誰もが思ってるはずです。
で映画版。とにかく原作をなぞって、「レディ・ジョーカー」を構成するのに必要最低限な要素は全て詰め込んだ、って感じです。詰め込むのがやっとで各キャラクター像が深く描写されているとはいえないけれど、2時間の中で精一杯やったな、よく頑張ってるよ、でもやっぱり原作の方がいいな、、、と思ってしまいます。映画としては、犯人側か警察側かに焦点を絞って描いた方が面白いものになったのかもしれませんが、それだとレディジョーカーとは言えない作品になってしまいそうで、難しい所ですね。