ONE で精神的オナニー

上で名作エロゲー「ONE」について触れたので、ちょっと紹介したく思います。
「ONE」はTacticsから1998年に発売されたエロゲーで、オタクの間に"泣きゲーブーム"を呼び起こす契機となった作品です。
ヌけなくても良いから泣けるエロゲーがやりたい!そんなバカなブームは前代未聞です。エロゲーをAVに置き換えて考えてみてください。ヌけなくても良いから泣けるAVが見たい、そんなバカな話がありますか!スットコドッコイにも程があります。
一体オタクはエロゲーに何を求めていたのでしょうか?って答えは簡単、エロを求めずにエロゲーをやる理由は、「(美少女に)愛されたい」これに尽きます。これは言い換えれば精神的なオナニーがしたいって事です。この部分こそ「ONE」の優れていた所です。「ONE」は精神的なオナニーのオカズとして大変に完成度が高かったのです。
「ONE」を高品質な精神的オカズたらしめた演出の手管を簡単に書くと以下のような感じです(ネタバレします)

  1. まず主人公とヒロインの日常描写が執拗に繰り返されます。果てしなく続くヒロインとのコミュニケーションを強いる事で、プレイヤーに主人公キャラへの感情移入を促します。
  2. やがてヒロインとの恋愛関係が進展し肉体関係が持たれます。恋愛関係は絶頂を迎え、主人公とヒロインの絆は深まります。ここまでは正当な恋愛話・エロゲー話の範疇です。
  3. 突如、主人公の周りの人間が主人公の事を忘れてしまいます。しかしヒロインだけは主人公のことを忘れません。「ヒロインがいかに主人公(=プレイヤー)を愛しているか」がこれ以降は執拗に描かれます。これがキモです。
  4. 周りの人間は忘れるだけでなく、主人公のことを"見る"事もしなくなります。石ころ帽子装備状態です。でもヒロインだけは主人公を知覚します(=ヒロインは主人公が大好き)。
  5. 主人公もヒロインも、主人公がこの世から消滅しつつある事を悟ります。そして主人公をこの世に繋ぎとめようと必死のヒロインの願いも空しく、ついに主人公はヒロインの目の前で消滅します。泣き崩れるヒロイン(=ヒロインは主人公が大好き)。
  6. 主人公不在の世界で、主人公の影を追いながら健気に季節を過ごすヒロインの姿が、しつこく描写されます(=ヒロインは主人公が大好き)。
  7. 突然主人公が世界に復帰します。主人公と再会したヒロインの輝く笑顔でゲームは幕をおろします(=ヒロインは主人公が大好き)。

オタクは、最後の5、6、7あたりで感動します。5、6では、主人公(=プレイヤー)の事をこんなにも愛してくれるヒロインが、とっても可哀想ウワーン。
7では、主人公(=プレイヤー)の事をこんなにも愛してくれたヒロインが、幸せになれて本当に良かったねウワーン。
と、こういうわけです。これが精神的オナニーで無くて何でありましょうか!
つまり泣きゲーブームの実態とは、オタクが普通のオナニーも良いけど、精神的オナニーも気持ち良いねって事に気づいたってことなのです。そしてクリエイター側が、精神的オナニーのオカズに需要があると気づいたって事なのです。おまけにセカチューに代表される昨今の泣ける純愛ドラマブームも基本的に同じなんだと思うのです。おわり。